ニセモノの白い椿【完結】
「生田さん、もしかして、読モとかやったことあります? それくらい綺麗だから」
今度はわざとらしく私に身体を寄せて、上目遣いで見上げて来る。
そんな心にもない褒め言葉に乗ったりはしない。
女子の”かわいい”とか”キレイ”には必ず複雑な感情が絡まっている。
だから、はっきりと言ってやった。
「私は、もう若くもないし。男の人からそういう対象として見られるような人間でもないんですよ。ただの、三十過ぎのバツイチ女です」
変に敵対心をもたれるより、最初に教えておいてあげる方が得策だ。
「……え? 本当ですか? 全然、見えないです! 20代にしか見えない。ましてや離婚歴なんてあるようには見えなーい!」
ほら。一気に白石さんの表情が変わった。
さっきまでの、含みのある笑顔から、完全なる満面の笑み。
そして、そこには少しの蔑みが含まれる。
彼女の中で、私が闘うべき相手じゃなくなった瞬間だ。
「でも、生田さんほどの人なら、またいくらでもいい人見つけられますよ。全然、問題なしです」
否定もせず、肯定もせず。私はただ、微笑みで返した。それが一番いい。
「実際、立科さんは、生田さんに好意を持っているわけですから。生田さんに断られないために私を誘うなんて、立科さんが本気だっていう証拠です!」
どうしても、そっちの方向に持って行きたいのか。
「ガンバです!」
何を思ったのか、手を握りしめられて。
私は、ただ顔が引きつるのを感じながら苦笑し、そっとその手を離した。
――結局、行動力があるらしい立科と白石さんのいらぬチームワークのせいで、私は彼らと食事を共にする羽目になった。