ニセモノの白い椿【完結】
「どういう意味だ」
立科さんが声に棘を含ませて、木村に身体を向ける。
「別に。深い意味はないよ。それより、何か注文しよう。腹減った」
そんな立科さんとは裏腹に、木村が呑気なことを言う。
「そ、そう、ですね! 立科さん、ここのお店、何がオススメですか?」
一瞬驚いたような顔をした白石さんが、でもすぐに笑顔を作り立科さんに話を振っていた。
「あ、ああ、この店なら――」
納得いかない雰囲気を醸しつつ、立科さんがメニューを開く。
四人それぞれが違うことを考えていそうなちぐはぐな食事の席だったが、形式的な乾杯を終えいくつか料理が運ばれて来た頃には、少しずつ会話も繋がり出した。
まあ、その会話のほとんどを白石さんが担っていたけれど。
「木村さん、今日はいつもと雰囲気が違いますね。同期の立科さんとご一緒だからですか? なんだかいつもより、砕けた感じ」
白石さんが真っ直ぐに木村を見つめている。
「そうですか? 自分じゃ意識していないけど」
「絶対そうですよー。でも、そんな木村さんも親しみやすくて、嬉しいです」
立科主催の会だということを放り出し、完全に、白石さんの木村へのアピールの場と化している。私は特に自ら口を開くでもなく、淡々と出された食事を食べていた。
「いつもは木村さんとゆっくりお話するチャンスないから。今日は、本当にラッキーです」
「俺と、話したい? 珍しい人もいたものだ」
「えー! そんなこと言って。木村さん、絶対モテますよね」
「モテませんよ」
「ウソウソ、絶対嘘ですっ!」
ーー。
隣の席で、きゃぴきゃぴと交わされる会話をBGMにして、今度はワイングラスを口に運んだ。