ニセモノの白い椿【完結】
「そうですか。それなら良かった。もし、生田さんも立科に少なからず好意をもたれていたのなら、余計なことになってしまいますからね。そんな野暮なことはしたくない」
この男、一体、何を言ってるんだ――?
「いい加減にしろよ!」
コケにされた形になった立科さんが声を荒げた。
怒る気持ちは十分に理解できる。
「ちょ、ちょっと、木村さん。ダメじゃないですかぁ、そんなこと言って立科さんを困らせちゃ。同期なんだから協力してあげてください」
すっかりその存在を忘れていた。笑顔を作りつつ、どことなく強張った声で白石さんが二人をなだめている。
「協力? それは、生田さんと立科を結びつける協力、ということですか?」
「えっ? え、ええ、まあ」
じろりと視線だけを白石さんに向けて、低い声を放った。
「それは、立科の立場にしか立っていないことでは? 生田さんは、それを望んでいるのでしょうか」
さらなる木村の発言に、白石さんがより顔を強張らせる。
「お、おまえ、いい加減にその口を閉じろ――」
怒りの頂点に達したのか、立科さんが勢いよくテーブルに手を付き立ち上がろうとしたところを、白石さんの声が遮った。
「木村さんって、本当に紳士的で大人なんですね。女性の立場に立って考えてくれるなんて、なかなかできることじゃありません。でも、それと同じくらい、生田さんもとっても大人な女性なんですよ?」
は、い――?
白石さんが、何を思ったのかそんなことを言い出す。
そして、その口がペラペラと喋り出した。
「確かに、こういう席を勝手にセッティングされたと知れば、迷惑だと思う場合もあります。でも、生田さんならきっと、立科さんのそういう思惑ですら寛大な気持ちで受け止められる方だと思うんですよ。現に今だって、生田さんは、嫌な顔一つされていない」
この小娘、何を言い出し始めたんだ?
思わず隣の彼女を見てしまう。
白石さんは、手元にあったグラスの酒を飲んでから、再び口を開いた。