ニセモノの白い椿【完結】

「――えっ。俺より年上だったの? なんか、すみません、勝手にタメ口きいて。でも、白石さんの言うように、全然そんな風には見えない。年上の女性って、なんだかそれだけで、そそられる。生田さん、まだまだ全然いけます」

”まだまだ全然いけます”

余計なお世話だ。

隣の小娘の魂胆は丸わかりだ。
私が”三十路バツイチ”という情報をさりげなく木村にも知らせたかった。
そういうところだろう。

「……ありがとうございます。でも、そういうことは若い子に頑張ってもらって。私はどちらかと言うと応援する立場です。もうただの”オバサン”ですから」

ここぞとばかりに、とびっきりの笑顔を向ける。

白石さんに言われたことなんて、なんとも思わない。

木村とでも立科とでも、勝手に頑張ってくれ。

心が動かないのだ。
ただただ、冷ややかになっていく自分の心に、ある意味哀しみさえ覚える。
心にあるの望みは、新たな何かを生み出すことじゃなく、今ある痛みを完全に消し去りたいということ。ただ、それだけだ。

「――生田さん。そんなこと思う必要ない。全然ないですよ。俺は、本当にあなたのことを素敵だと思う。その気持ちが、今、更に大きくなった」

立科さんが、何故か姿勢を正す。
そして、こっちが引いてしまうほどに大真面目な表情でそう言われて、思わずのけぞってしまった。

「そ、それはどうも――」

「――生田さん。そう言えば、今日は、夜に弟さんがいらっしゃるんじゃなかったですか?」

「は……?」

突然、訳の分からないことを木村が言い出して、取り繕うのも忘れるほどに驚いた。

「そうおっしゃってたでしょう? 忘れてしまったんですか?」

「え……、あ、ああ」

木村が何かを訴えるように私の目をじっと見ている。

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