ニセモノの白い椿【完結】
「分からないよ。白石さんが、俺を狙ってるなんてことは」
やっぱり、分かってんじゃないのよ――。
「分からないことにしておきたいんでしょう? それはあなたの勝手だとしても、私を巻き込まないで。白石さんに変な誤解されたらどうしてくれんの」
そう訴えても、グラスばかり口にして聞いているのかいないのか分からない。
「俺にとって、あなたが対象外かどうかも分からない」
「ちょっと、人の話聞いてるの? 明日からも、きっちり他人風に接してよ。あくまで今日は、たまたまお互い用事があって一緒に出ただけだって」
あれやこれやと、白石さんに詮索されるのも面倒なだけだ。
「――はい、はい、わかりましたよ。どちらにしたって、俺は、誰かと付き合う気はないし」
吐き捨てるように木村がそう言った。
「俺は、博愛主義者だからね。特定の恋人は作らないの。だから、生田さんは安心して俺と友達になってもいいと思うけどな」
一瞬、こちらがすっと冷えるような冷たい表情を見せたと思ったら、もうすぐにいつものヘラヘラとした顔に戻っている。
「まったく、何が”博愛主義者”よ……」
――誰かと、付き合う気はない。
確かに、モテるのが面倒で職場内では地味にしていると言う。
でも、目の前の男に抱くイメージの中で、その言葉だけが宙に浮いて。どうにも馴染まない。その違和感が、心の奥底にべったりと張り付く。