ニセモノの白い椿【完結】
翌朝――。
思っていた通りの、展開が待っていた。
朝のロッカールーム。運の悪いことに、ちょうど白石さんと同じ時間に出勤して来てしまった。
「白石さん、おはようございます」
「おはようございます」
その目は……かなり厳しいものだ。あんなににこやかに接していてくれていた彼女の態度は、180度変わっている。
「昨日は、途中で帰ってしまってどうもすみませんでした。では、今日も、よろしくお願いします――」
「生田さん、待ってください」
そそくさと持ち場へと行こうとしたら、白石さんが私を呼び止めた。
「昨日、木村さんと帰られたのは、本当にたまたまですか?」
いきなり尋問ですか。
「ええ、そうですけど。あの後、大変でした。弟をアパートの前で待たせてしまっていたので怒られて。あはは……」
可笑しいのかどうかわからないけれど、とりあえず笑っておく。
「生田さんは、木村さんのこと、どんな人だと思われてます?」
「どんな人……ですか?」
なんだ、その微妙な質問は。『どう思っていますか?』とはさすがにいきなり聞けないから、そんな中途半端な問いになっているのか。
「どんなって、あまり仕事上接点もないですし。以前、白石さんに教えていただいた情報くらいしか私には分かりませんので」
さすが、私。だてに二十年以上演技を続けてきたわけじゃない。しらじらしい嘘を平気で言える。
「そうですか。じゃあ、特別親しいというわけじゃないんですね?」
う――。
そう念を押されると、さすがに少し後ろめたい。どちらかと言えば、木村は、この銀行内で一番親しい人、かもしれない。
でも、そんなことバカ正直に伝えることもない。
「もちろんです。私は、まだまだここに来たばかりで。仕事を覚えるのに精いっぱいですから」
ふふっと、余裕を見せるように微笑んで先にロッカールームを出た。
そして、扉を閉じたと同時にはぁっと大きく息を吐く。