ニセモノの白い椿【完結】
「お、おかえり。少し前に帰って来たところ。お世話になって、ます……」
自分の部屋から顔をだけを出し、木村にそう告げた。
玄関先には、白いビニール袋と紙袋を手に提げた少し息の上がった木村がいた。
「そんな風にかしこまらないで。それより、もうご飯は食べた?」
「うん」
「じゃあ、一杯、付き合わない? シャンパン買って来たんだけど。同居スタート祝いってことで」
そう言って手にしていた紙袋の方を掲げた。
「え……、う、うん」
スタートって、昨日から、ここにお世話になってますが――。
なんてどうでもよいことを心の中でつっこみつつ、あまりに木村がにこやかに言うものだから、断るのもおかしいような気がして頷いていた。
リビングダイニングに向かう木村の後ろをついて行く。
「あれ、部屋暗いけど、生田さん、ここでご飯食べなかったの?」
「うん、そう」
部屋の明かりのスイッチを押しながら、木村が振り返った。
「どうしても自分の部屋が落ち着くって言うのなら無理強いはしないけど、遠慮なく自由に使ってよ。リビングもキッチンも。そんなにいろいろ気を回してたら全然寛げないでしょ?」
「……そうだね。じゃあ、そうさせてもらう」
「本当に、遠慮なんてまったくいらないから。冷蔵庫も自由に使って。名前でも書いておいてくれれば、勝手に食べたり飲んだりしないからさ!」
冗談ぽくそう言う木村につられて、私も笑ってしまった。
「じゃあ、少し、飲みますか」
「じゃあ、グラスとか――」
「いいから、生田さんはそっちに座って」
ダイニングテーブルに白いビニール袋を置くと木村がせっせと準備し始めて、私は仕方なくソファに腰掛けた。
少し経って、ジャケットを脱いだ木村がグラスとシャンパンを手にしてやって来た。
それをソファ前のローテーブルに置くと、木村はもう一度キッチンの方へと戻り、そしてプラスチックの容器を持っていた。
「夕飯まだだからさ」
そう言うと、テーブルにそれを置く。明らかに、コンビニ弁当だ。唐揚げ弁当。
こてこての油にまみれた、いかにも健康に悪そうなメニューだ。