ニセモノの白い椿【完結】
「では、とりあえず乾杯しますか」
前の晩と同じ、私が座った斜め隣にあるオットマンに腰掛けると、木村がシャンパンのコルクをあけグラスに注ぐ。
「どうぞ」
「ありがとう」
それを受け取り、カチンと音を鳴らす。
「――美味しい」
いかにも高そうな味。そして、めちゃくちゃ美味しい。
「それは良かった」
満足そうな顔をしてから、木村はコンビニ弁当に手を付け始めた。
「……夕飯は、いつもコンビニ弁当?」
グラスを唇から離して、唐揚げを食べている木村に問い掛けた。
「あ、ああ……。まあね」
「ふーん」
「だから、あなたも気にしないで」
「何が?」
木村がニヤッとして私を見る。
「あなたが毎日コンビニ弁当だとしても、俺は何とも思わないよってこと。お互い様だ」
それは、私が完全に料理出来ない女だと思ってる顔だな――?
「それは、どうも」
まあいい。どう思われようと、構わない。
「それにしても、もう少し栄養バランスを考えたお弁当を選んだ方がいいよ? 遅い時間に揚げ物とか、絶対だめなやつ。人にとやかく言えないけどね」
グラスに残ったシャンパンをもう一口飲んでから、横目でちらりと木村を見る。
「俺、料理は全然出来ないから、バランスとか考えたことないな」
木村が自分の弁当をまじまじと見つめながら、そう呟いた。
まあ、若い男なんてそんなものかもしれない。
「どういうものがいいのか、分からない。食事のメニューなんて生まれてこのかた、自分で考えたことなんてないしなぁ」
まだぶつぶつと言いながら、箸ではさんだ唐揚げをじっと見つめている木村が可笑しくなる。
「何が可笑しいの」
「木村さんでも、分からないことなんてあるんだなって思って」
いつもいつも達観したようなことばかり言うから、唐揚げを真剣に見つめる木村に笑ってしまった。
「そりゃあ、あるでしょ。人生、分からないことだらけだ。生田さん、俺のことなんだと思ってるの」
「ごめん、ごめん」
笑いをこらえる私に、木村が怪訝な視線を向ける。そして、少し低い声になってぽつりと呟いた。
「――立科のことだけど」
「……え?」
口元を押さえて笑っていると、思いもしない話題が放り込まれて真顔になる。