ニセモノの白い椿【完結】

マンションを出て、駅までの道を二人で並んで歩く。

銀行の前ほど立派なものではないけれど、ここにも街路樹が植えられていて、朝陽を受けて輝いていた。

「――今度の週末、何か予定ありますか?」

「え?」

ぼけっと木なんかを眺めていたから、木村の声に慌てる。

「もし、何か足りない物があれば、買い物も必要かなと思って。俺、車出せるから」

「で、でも、休みの日まで付きあわせたら悪いから。大丈夫。私一人で出来る範囲でするし――」

「これは、俺からの誘いです。だから、俺が迷惑かどうか基準で考えないで。生田さんが必要かどうかで決めてください」

隣を歩く木村が私の言葉を遮るように言った。

必要かどうかと言われれば、もちろん車を出してくれるのは大変に助かる。

でも、休日まで時間を奪っていいものか――。

「――ごめん。俺、ちょっと出しゃばり過ぎだったかな」

あれこれと考えを巡らせていると、ふっと息を吐いた木村が言った。

「……え?」

木村が気まずそうに私から視線を逸らす。

「干渉してほしくない、というのであればそれで全然かまわないから。生田さんが一番居心地いいようにしてほしい。一緒に暮らし始めたからって、あれこれ干渉されたくないよな。ごめん――」

「ううん。そんなこと、全然思ってないから!」

気付くと、私は朝っぱらから声を張り上げていた。

「あ、いや、その、そんな風には思ってない。木村さんには木村さんの生活があるだろうし、できればそれを奪うようなことはしたくないって思っただけ。でも、迷惑じゃないなら、頼もうかな」

木村の表情を見ていたら、そう言わずにはいられなかった。本当に、そんな風には思っていなかったからだ。

「もちろん、迷惑だなんて思ってない。じゃあ、週末、買い物にでかけようか」

「うん」

お互い笑って頷く。

なんだろ、なんだろ。これは、一体なんだ――?

私は、何故に、こんなににこやかに微笑んでいるんだ。

この空気は一体なんだ。

以前より、木村の私への接し方が優しくなったのは気のせいか?

ふるふると頭を振る。
気を緩めると、脳が溶けそうだ。

いかんいかん。春という季節のせいで、おかしな気分になりそうだ。

今一度気を引きしめる。

浮ついている場合じゃない。
私は、そんな立場じゃない。

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