ニセモノの白い椿【完結】
慣れない生活の中乗り切った平日を終えたのち、より緊張するであろう週末がやって来た。
平日はまだ良かった。木村とこの家で過ごすのは朝と夜だけで済んでいた。
初めて迎える、仕事が休みの日。
朝から一緒だなんて、家族みたいだな。長い……。
ごちゃごちゃと考えていても仕方がないので、おそるおそるリビングダイニングへと向かった。
「お、はよう……」
ドアを開け、とりあえず部屋の様子をうかがう。
「おはよう」
リビングではなく、キッチンの方から木村の声がした。
もう、起きているのか――。
着替えも済ませていた私服姿の木村が、キッチンに立っていた。
「コーヒーとパンくらいしか準備できないけど、朝飯食べる?」
木村は、コーヒーメーカーからカップにコーヒーを注いでいた。
「自分で、やるよ」
「いいよ。ついでだし。パン焼くよ」
「は、はい」
どうしようかと迷いつつ、ダイニングテーブルに座るけれど、手持無沙汰で落ち着かない。
リビングから差し込む太陽の光が、部屋を明るくしている。
どうやら天気は晴れのようだ。
「――で、今日だけど。これ食べたら、早速出かけよう。車はもう実家から取って来てあるから」
トーストとコーヒーカップを私の前に置くと、向かいに木村が座った。
「実家? 車、このマンションには置いてないの? わざわざ取りに行ってくれたんだ」
「あ、ああ。そう。このマンション、今、駐車場の空きがなくてね。それで仕方なく。それより、天気もいいしドライブ日和だな」
まるでこれからレジャーにでも行くようなノリの木村に不思議に思う。
「ドライブ? 買い物でしょ」
「同じようなものだ」
「同じかな」
「同じだよ」
眼鏡をしていない木村が、にっこりと笑う。