ニセモノの白い椿【完結】


慣れない生活の中乗り切った平日を終えたのち、より緊張するであろう週末がやって来た。

平日はまだ良かった。木村とこの家で過ごすのは朝と夜だけで済んでいた。

初めて迎える、仕事が休みの日。

朝から一緒だなんて、家族みたいだな。長い……。

ごちゃごちゃと考えていても仕方がないので、おそるおそるリビングダイニングへと向かった。

「お、はよう……」

ドアを開け、とりあえず部屋の様子をうかがう。

「おはよう」

リビングではなく、キッチンの方から木村の声がした。

もう、起きているのか――。

着替えも済ませていた私服姿の木村が、キッチンに立っていた。

「コーヒーとパンくらいしか準備できないけど、朝飯食べる?」

木村は、コーヒーメーカーからカップにコーヒーを注いでいた。

「自分で、やるよ」

「いいよ。ついでだし。パン焼くよ」

「は、はい」

どうしようかと迷いつつ、ダイニングテーブルに座るけれど、手持無沙汰で落ち着かない。

リビングから差し込む太陽の光が、部屋を明るくしている。
どうやら天気は晴れのようだ。

「――で、今日だけど。これ食べたら、早速出かけよう。車はもう実家から取って来てあるから」

トーストとコーヒーカップを私の前に置くと、向かいに木村が座った。

「実家? 車、このマンションには置いてないの? わざわざ取りに行ってくれたんだ」

「あ、ああ。そう。このマンション、今、駐車場の空きがなくてね。それで仕方なく。それより、天気もいいしドライブ日和だな」

まるでこれからレジャーにでも行くようなノリの木村に不思議に思う。

「ドライブ? 買い物でしょ」

「同じようなものだ」

「同じかな」

「同じだよ」

眼鏡をしていない木村が、にっこりと笑う。


< 82 / 328 >

この作品をシェア

pagetop