ニセモノの白い椿【完結】
雲一つない清々しいほどの青空が、車の窓から見渡せる。
ドアの窓に頭を寄せ、その空を見上げていた。
ステレオからは、こじゃれた洋楽が流れている。
曲名は知らないけど、どこかで聴いたことがあるという曲が次から次へと流れている。
そういう選曲をするあたり、なんとなく木村らしい、なんて思ってしまう。
運転席にいる木村はと言えば、その洋楽に合わせて鼻歌を歌っている。
「……なんか、楽しそうだね」
ちらりと顔だけを木村に向けた。
「ん? 生田さんは? そう言えば、車に乗ってからあまり喋らないね。車、弱い?」
「いや、そうじゃなくて、この車、恐ろしく乗り心地がいいから……」
BMWなんて初めて乗ったよ。なんだ、この、走っている感じのない走行感は。
シートもほどよい弾力。
確かに、それも理由としてはあるのだけれど、助手席に座るというこの行為が、そして車内という密室感が緊張する。
「まあ、そこそこ高いからね。それにしても、本当にいい天気だな。お昼は、オープンテラスのあるレストランなんか、いいかもね」
「……友達相手に、そんなに張り切らなくていから」
「だから。俺はね、サービス精神が旺盛なの。せっかくなら楽しんでもらいたいし」
ふーん――と気のない返事をしたら、木村が突然「あっ」と声を上げた。
「な、何よ」
驚いてもう一度木村の方を見る。
「今、友達相手って言ったよね。俺、友達になったってことでいいんだね?」
ちょうど信号待ちになり、満面の笑みで私の方を見た。
「え、ま、まあ、一緒に暮らしてるし、友達くらいにはしておかないとおかしい気もするし」
そんな顔でそんなことを言われれば、認めるしかない。
「あなたに今一番必要なのは、友達だ。いい判断だ」
木村は、またも嬉しそうに一人頷いている。
この”博愛主義者”は、天然か? それとも、策士か――。