ニセモノの白い椿【完結】


車で1時間ほど走った先に、そのショッピングセンターはあった。

様々な店舗が同じ敷地内に並ぶ大きな商業施設で、
天気の良い休日ということもあって買い物客で賑わっていた。

「生田さんが行きたいのは、ホームセンターだよね」

「うん、そう」

そもそも手持ちの家具は少なかったが、時間もなかったから持って来た家具と言えばスーツケースに入れることのできた折り畳み式のテーブルだけだ。
新しい部屋に移るにしても、いつかは必要になる。身の回りのものを整理する棚が欲しかった。

家族連れで溢れる店内で、引き出し付きのカラーボックスと、何にでも使えそうな籐製の大きな籠を買った。それだけでもう、大荷物だ。

「とりあえず、それだけ先に車に入れて来る。生田さんは他に欲しいものがあれば店を見ていて」

「うん、ありがとう」

ホームセンターの中を、特に目的もなく見て回っていると、食器が置かれているエリアにたどり着いた。

最低限の食器はアパートから持って来た。と言っても、マグカップと箸と丸い皿一枚だけ。

様々な形をした食器を眺めながら、なにげなく手に取る。

少しはあった方が役立つかな――。

木村のマンションにもほとんど食器はなかった。
料理をしないというのだから、当然だと言えば当然だけれど。

「生田さん。お待たせ。なに、食器? 食器が欲しいの?」

戻って来た木村がひょいと覗き込んで来る。

「少しくらいはあった方がいいかな、とも思ったんだけれど、まあ必要ないかな――」

「いや。確かに、必要だと思う。料理はしないとは言え、総菜を買って来た時なんか、器に盛るくらいのことはするだろうし。今も、トーストのための皿でさえ一枚しかないし。うん。いくつか買おう」

予想に反して、木村が乗り気になった。

「この、お皿なんかどうかな」

「いや、その大きさの皿って、一番使い勝手に困るタイプだよ。大きくもなければ小さくもない。ワンプレートとしていくつも盛り付けるには小さしいし、一品料理のためとしては大きすぎる」

私が真剣に答えると、木村が私を見て言った。

「料理しないくせに、的確な意見」

「いや、まあ、普通だよ」

木村が「そう?」と呟くと、また並んだ皿に視線を戻していた。

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