ニセモノの白い椿【完結】
「これは、どう?」
新たに、ちょうどいい大きさのボール皿を木村が私に差し出して来た。
「これはいいね。サラダ用にびったり」
「よかった。今度は、オーケーをもらえた」
目を細めて、木村が笑う。
だから、つられて私も笑ってしまった。
この人といると、結局いつも、つられて笑ってしまっている。
買い物を済ませて、ホームセンターを出た。
大きなショッピングセンターだからだろう、家族連れが多い。
小さな子どもを連れた夫婦、小学生くらいの子どもたちと歩く家族、そんな人たちばかりに目が行く。
ベビーカーを押す、自分と同じくらいの年齢と思われる夫婦を見て足が止まる。
私も、あのまま結婚生活を送っていれば、あんな風に子供の一人でも出来ていただろうか。
母親になって、温かい家庭を――。
そんな現実とは違うものを想像しても仕方がない。仕方ないことだと分かっている。
でも、自分では成し得なかったものを目にして、頑なに蓋をしていた感情がうごめく。
私は、このまま死ぬまで一人で生きていくのだろうか。
母親になることもなく、ずっと、一人――。
不意に目の前が真っ暗になる。
離婚してから考えないようにして来た。
特に、遠い未来のことは。
必死に、近い未来だけを見て来た。
近い未来で目の前を埋めようとした。
だから、東京に思い切って出て来た。就職もした。
東京に出て来たこと、再就職したこと、それは全部近い未来。
怖くて、遠い未来なんて考えたくもなかった。
一度考えてしまえば、私は――。
「生田さん」
暗闇に引きずり込まれそうになっていると、そこから連れ戻すように私の数歩先を歩いていた木村から声がした。