ニセモノの白い椿【完結】
「生田さん、料理出来たの?」
「――私、料理出来ないとは一言も言っていないと思うけど。これでもいちおう、主婦だったので。それで、どうするの? 食べるの?」
「もちろん、いただきます!」
いつもより少し声の大きい木村から、いい返事が返って来る。
はしゃぎ気味の木村をとりあえずテーブルに座らせ、そぼろご飯と具沢山味噌汁をその前に並べた。
木村の向かいに座り、手を合わせる。
「いただきます」
「いただきます!」
待っていましたとばかりに、木村が箸を手にした。
「どれもこれも最高に美味しいんだけど! 感動モノだよ」
それぞれを一口食べただけで、木村が目を輝かせた。
「おおげさだな。大した料理じゃないけど」
そんなにも喜ばれると、照れるんですけど――。
料理を作ることに少し迷いもあった。でも、作って良かった。
「いやいや、これは凄い。生田さん、ごめん、勝手に料理出来ない人にしていて。いや、美味い!」
それにしても美味いな――何度も何度もそう言いながら、あっという間に木村は食べ終えた。
誰かに料理を作ったのも、自分が作ったものを一緒に食べるのも、夫にしていた以来のこと……。
「こ、これからも時間ある時は作るから、気が向いたら食べて。冷蔵庫に入れておく――」
元夫にも、『美味しい』と笑ってほしくて、頑張って料理していた。ただその一言が嬉しくて。毎日毎日せっせと料理をしていた。
やだなーー。
ただそれだけのことで、なぜか鼻の奥がつんとして来た。
「一緒に食べられる時は、一緒に食べようよ。食事は一人より二人の方が美味しいだろ? お互い、残業のない時はさ」
「……そうだね」
そんな、意味のない感情を振り払う。
「それにしても、美味かった!」
過去の記憶を上書きしてくれるみたいに、木村が笑顔がそこにあった。