ニセモノの白い椿【完結】
木村をソファに座らせ、その前にひざまずく。
そして血の滲んだハンカチが巻き付けられていた手を取った。
自分の部屋から持って来た救急箱から、ガーゼと消毒液、包帯を取り出す。
そっとハンカチを取ると、痛い痛しい傷口が姿を現した。
「そんなに深くはないけど、でも浅くもないよ。ちゃんと病院に行った方がいい」
ただじっと木村の手だけを見つめる。
間近に感じるその気配から意識を逸らすように、ただその手だけを。
でも、その手の傷を見れば、胸がひりひりと痛む。
こんな傷を付けさせてしまった。
消毒液で消毒するとき、木村の手に力が入る。酷く沁みるに違いない。
「……本当に、ごめん」
「大丈夫、大丈夫。子供じゃないんだから、これくらい平気だ」
「ほんとに、ごめん」
ガーゼを包帯で固定した。
初めてちゃんと触れた木村の手は、思っていたよりずっと大きかった。
「ごめん。私が、軽率なことをしたから。木村さんに、こんな傷を……。相手の男、ナイフ持ってた。もしかしたら、この程度の傷では済んでいなかったかもしれない……っ」
あの瞬間の恐怖が、抑えつけていた分だけ身体中を埋め尽くして溢れ出す。
「……生田さんの手、まだ震えてる」
頭上から降って来た木村の声で、まだ自分が木村の手に触れていたことに気付く。慌てて手を離そうとすると、その手を不意に握りしめられた。
「だ、大丈夫……っ」
咄嗟に引っ込めようとしても、それ以上の力で握りしめられた手を引き寄せられた。