契約ウエディング~氷の御曹司は代役花嫁に恋の病を煩う~
優しくしてくれた俊吾さんに幼い私は憶えたてのひらがなでラブレターを書いて渡した。

「何これ?」

「ラブレター・・・」

そのラブレターには「おとなになったら、しゅんごくんのおよめさんにしてほしい」と書いた。
ラブレターの返事を貰えない私は「およめさんにして」と彼を追い駆け回した。



幼い私は自分の立場とか身分とか全く理解していなかった。

「大体、あれから二十年経ってるし…もう時効よ」

「俺達の間に時効は成立しない。だって俺は今でも憶えてるぞ…あのあんパン事件は…」



小麦アレルギーだった彼を不憫に思った俊吾さんの母親が父に相談。
米粉を使用した彼用の特別なパンを作った。
長谷川家のパンは小麦粉のパンと俊吾さん用の米粉パンの二種類を届けていた。


私はそんなコトを露知らず、謝って彼に小麦粉で作ったあんパンをあげてしまった。


それ以来、私は長谷川家には出入り出来ず、俊吾さんとも遠ざかってしまった。
私の初恋は一口のあんぱんで終わってしまった。

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