身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました


 やっぱり、人の多いところはなんとなく怖いな……。


 バッグには妊婦マークをつけているし、何よりこのお腹を見れば妊娠しているのは一目瞭然だけど、やはりどこで何があるかわからない。

 これだけ人が多ければぶつかられて転倒する可能性もあるし、私の場合は急にお腹が張って苦しくなることだって有り得る。

 誰かが一緒なら安心できるけれど、自分ひとりだというのは妊婦にとっては心細い。

 サクッと買い物して、早めに帰ろう。

 そう思いながら駅ビルの入口に向かって歩いていると、前から急いで走ってくるサラリーマン風の男性のカバンが私の持つバッグに激しく当たっていった。


「っ……!」


 その衝撃でふらつき、足は止められる。

 男性は足を止めた私に一瞬振り向いたものの、相当急いでいるのかそのまま走り去っていった。


 あ、取れちゃってる……。


 カバン同士がぶつかったせいで、バッグの持ち手につけていた妊婦マークのキーホルダーが取れて地面に落ちてしまっていた。

 お腹が大きいせいで前かがみで拾えず、その場にしゃがみ込んでキーホルダーを手に取る。

 ゆっくりと立ち上がり、ふぅと息を吐いたところで、近づいてきた人の顔を目にした私の時間が一瞬にして静止した。

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