身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました


 卓哉がスーツの時に履いている革靴と、よく履いているキャンバススニーカー。

 その二足と、明らかに卓哉のものとは思えない白いスニーカーが一足。


 誰……?


 私の靴を置いたら、もうぎゅうぎゅうで窮屈そうな玄関を黙って上がる。

 気配を消して細い廊下を進んでいくと、奥の部屋から微かに声が聞こえた。

 女性の感じ入る、艶っぽい声。

 心臓がドクッと膨れ上がって、バク、バクと音を立てていく。

 まさか……それ以上何も考えられないままドアを開けていた。

 部屋の奥に置かれるシングルのベッドの上、もつれ合うふたつの人影。

 仰向けの女性はひっくり返ったカエルのような格好で、その上にはおかしなことに私の彼が乗っている。

 自分でも驚くほど冷静にその光景を眺めていて、お取込み中のふたりが私に気付いた時には、目の前のローテーブルに置いてあった汁がたっぷり残されたカップラーメンの器を手にしていた。


「ふざけんなっ!」


 その言葉と共に繋がったままのふたりに向かってカップラーメンをぶん投げ、飛び出すようにして部屋をあとにした。

 エレベーターは使わず三階から階段を駆け下り、雨の中マンションから駆け出す。

 傘を忘れたことには即気付いたけれど、取りに戻ることなんてしようとも思えなかった。

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