身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました
「拭いてください」
タオルハンカチを差し出すと、晴斗さんはそれを手にして同じように水滴がついている私の腕や手を拭いてくれる。
「一気にきましたね。でも、帰りで良かったです」
幸いあとは互いに帰るだけ。日中にこんな目に遭わなくてよかった。
「晴斗さんは、住まいはここから近いですか?」
訊いてみると、晴斗さんはエンジンをかけながら「ああ、五分くらいで着く」と答える。
「そうなんですか、じゃあ良かった。近くまでこの車で行ってもらって、そこから私もホテルに帰るので」
「でも、大分濡れてるだろ」
「大丈夫です。車だし、寒くないですから」
繁華街から少し車を走らせ、晴斗さんが車を停めたのは十階以上はあると思われるマンションの建物前だった。
いよいよ、着いちゃった……ここで、お別れ……。
心の中でひとり別れを惜しんでいると、晴斗さんはなぜか駐車場に車を停め、何も言わず車を降りていく。
打ち付けていた雨は大分弱まったけれど、まだ止む気配はない。
運転席を出た晴斗さんは助手席に回ってくると、ドアを開け「降りて」と私に手を差し出した。