身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました


 そう言われても、そんな実感が全くない。

 だから、どうしたいなんてわかるはずもなく、ただ黙り込む。

 となりに掛けるお姉ちゃんは、ただ黙って背中をさすり続ける。


「佑杏が相手だからはっきり言うけど、産むことも、お別れすることも選べる」


 お姉ちゃんの口から出てきた〝お別れ〟という言葉に、何故だかぎゅっと胸が締め付けられる。

 堕胎――授かった命を、私の選択で消してしまうということだ。


「堕ろすのは、可哀想だと思う……」


 私がそう思うのは、以前お姉ちゃんに堕胎がどうやって行われるのか、お姉ちゃんが看護学校で見たという動画を見せられたからだ。

 お姉ちゃんの話だと、その授業では動画を見ながら涙を流す同級生もいたという。

 お腹の中で育ち始めたまだ小さな命を、堕ろすと選択するとどうなるのか……。

 自分が今からどうされるのかわかっているかのように、赤ちゃんは入ってきた器具からお腹の中で必死に逃げまどう。

 そんな赤ちゃんを捕まえ、残酷にも命を消してしまうのだ。

 それを見た時、私ですら心に誓った。

 堕胎という選択は絶対にしたくない、と。

< 88 / 238 >

この作品をシェア

pagetop