Pride one
 二十年は変わらない、癖かパーマか判断のつかない丸いシルエットの髪は、今日は四角くなでつけられている。踵のある靴を履いている姿を見るのも初めてだ。

「いえ。今日はおめでとうございます」
 初めて見る正装に、少し不思議な気持ちになりながら、優月は頭を下げた。

「びっくりしたでしょう、突然で」
 豪快に笑いながら、美波の母は優月の肩をばんばん叩いた。

「はい、まあ」
 優月は曖昧な笑みを浮かべる。

「美波は子供の頃からずっと、ゆずちゃんと結婚するんだ、って言ってたから、ああこれはもうお嫁にはいけないかなって思ってたのよ。ゆずちゃん、まだそういうの考えてないでしょう? お仕事もすごく忙しいんだってね」

「ええと……」
「ああ、いいのよ気にしないでね。仕方ないわよ、美波も気が強いし。うちのお嫁さんも美波の気の強さにすっかり負けちゃって。さざなみさんが気を遣って美波を働かせてくれてたけど、さすがにずっとっていうわけにもいかないでしょう」

 何か、話の流れがおかしい。これだとまるで、美波自身が静岡を離れ、誰かと結婚をするみたいだ。予想外の展開に、優月は視線を泳がせた。
< 34 / 53 >

この作品をシェア

pagetop