誘拐は激甘生活の始まりVI

リオンの唇が触れようとした刹那、バンとドアが開く音がした。そしてバタバタと廊下を走ってくる音がする。その足音に聞き覚えがあり、杏菜の心に安心が生まれた。

「杏菜！！」

リビングのドアが開き、息を切らしながら現れたのはダミアンだ。ダミアンは杏菜を見て微笑み、杏菜を拘束したままのリオンを突き飛ばす。その顔は杏菜が初めて見る激しい怒りの顔だった。

「杏菜を泣かせるような人間に、杏菜を渡すわけにはいかない！！本当に好きなら相手の幸せを考えろ！！」

そう言った後、杏菜はダミアンにふわりと抱き寄せられる。そして、「怖い思いをさせてごめん。もう離さない」と杏菜を離した後に優しくキスをした。

「ダミアン様……！」

ずっと恋しがっていた唇の感触に、杏菜の心が優しく音を立てる。涙がこみ上げてきそうになるが、杏菜はそれを堪えてリオンの方を向いた。

「リオン様、好きと言っていただいてありがとうございます。とてもお気持ち嬉しかったです。でも……私が愛しているのはダミアン様なんです」