きみに ひとめぼれ
グラウンドでは部活が始まろうとしていた。
広瀬がパスの練習をしている。
大きく蹴り上げたボールは空に吸い込まれるように消えて、そしてゆっくりと落ちて、練習相手をしていた後輩の足元にすとんと落ちた。
まるで、あいつのパスのようだった。
だけど違う。
全然違う。
あいつのようで、あいつじゃない。
真似は出来ても、同じじゃない。
何かが違う。
どこかが違う。
広瀬は僕が来たことに気づくと、こちらに走ってきた。
「勝見は?」
「まだゴミ捨ての途中、かな?」
僕に聞かれてもという感じで首を傾げた。
これは正直な回答であり、素直な反応だった。
「ったく、何やってんだよ」
なぜ広瀬がイラつくのだろう。
「恋か」
「え?」
「あいつ、坂井さんのこと好きだろ」
僕が何も答えないでいると、「困ったやつだな」とあきれたような口調で言った。
「付き合ってんの?」
「さあ」
僕は首をかしげて苦笑いをする。
「どう見ても付き合ってるだろ」
「知らないよ」
「じゃあなんだよ、あの生八つ橋は」
広瀬は目を大きくして意見を求める。
でも、僕には何とも答えられない。
本当に、知らないんだから。
広瀬はふーっと息を大きく吐くと、
「今はほっとくか、俺たちにはどうしようもできない」
と、苦し気に低い声で唸るようにつぶやいた。
そう言って走り去った。
広瀬も気づいているのか。
そりゃ気づかないわけがないか。
僕はあの日のことを思い出した。
あいつが、見事なシュートを決めた日のことを。