きみに ひとめぼれ

僕はそんな二人を、いつまでも見ていた。

あいつはいつの間にか僕の全然知らない世界にいて、なんだか二人とも、すごく大人びて見えた。

そのあとすぐに休憩時間になったんだけど、あいつはすぐに校舎に向かって走っていった。

僕はその後ろ姿をしばらく見送っていたんだけど、足はあいつを追いかけたがった。

走り出したのは良いけど、僕の足で追いつくはずもない。

でも行き先は何となく見当がついた。

僕は教室に向かって走った。

教室がある三階の廊下にたどり着くと、僕は教室まで全力で走った。

「勝見―」とあいつの名前を呼びながら。

何かに急き立てられるように。

教室の前まで来ると、あいつがちょうど出てきた。

ほとんどぶつかりそうな勢いだった。

徐々に暗さを増していく廊下で、あいつの顔はよく見えなかった。


「顔洗ってから行くわ」


声だけがぼそりと聞こえた。

あいつはそれだけ言って廊下を走っていった。

教室をそっと覗くと、やっぱり、坂井さんがいた。

坂井さんはぼんやりと窓際にもたれかかっていた。

自分の手をじっと見つめて何かに浸っているようだった。

実際何が起きたかわからなくても、あいつの様子と坂井さんの様子を見て、何かが起こったことは僕にだってわかった。

そしてその何かが、どんなことだったかも、想像ぐらいできた。


恋愛経験のない、僕にだって。


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