きみに ひとめぼれ
「勝見君は、私のこと、どう思ってるんだろう」
僕の質問に対する答えが返ってきたわけではないけど、その問いが答えだということぐらい、僕にもわかる。
「園田君にこんなこと聞いても、わかんないか」
へへっと彼女は照れたように笑う。
「坂井さんは、どうなの?」
彼女は下を向いてやっぱり答えなかった。
「あいつのことが、好きなの? それとも、まだ、本田のことが好きなの?」
その名前に、彼女が一瞬体をこわばらせたのが分かった。
でも、すぐにふーっと鼻から息を吐いて、肩を落として言った。
「そうだよねえ、みんな知ってるよね、私が本田君好きだったこと。
加奈子、声大きいからなあ。いやんなっちゃう」
彼女は参ったなあという感じで、明るく言った。
下を向いたときにはらりと落ちた横髪を、そっと耳にかけなおして、はあっと大きくため息をついた。
「カッコ悪いとこ見られちゃったなあ。
もう放っといてほしいよね。とっくにフラれてるんだから。
わざわざ彼女ができた報告なんてしてくれなくていいし。
どんだけ私をみんなの前で惨めにするのよ。
クラス中っていうか、学校中の笑いものだよ。
いつまでも追いかけてる、未練たらたらのイタイ子だって」
彼女はおかしそうに話すんだけど、自分で発するその言葉のひとつひとつに傷ついているのが僕にもわかった。
「そりゃあまだフラれたばっかだし、本田君見るとやっぱかっこいいなあって思うよ。
彼女までできちゃって、ショックというか悔しいというか。
未練みたいなのは、確かにあるのかもしれないけど。
でも、まだ好きかって聞かれたら、それも違う気がするし。
っていうか、そもそももう好きでいたってしょうがないし。
フラれちゃったんだから」
彼女は終始おかしそうにそう話した。
「自分でもよくわからないんだよね。自分のことなのにね」
最後の言葉だけは、ちょっと調子が変わった。
彼女は僕と視線を合わせず、教室の天井に、何か切ない思いを描きながら話しているようだった。
その表情は難しそうな、寂しそうな、おかしそうな、とにかくいろんな感情を絵の具でぐちゃぐちゃに混ぜているようだった。
「でもね、今は、本田君のことが好きかどうかなんて、もうどっちでもいいんだ」
うん、うんと黙って聞いていた僕も、その言葉を聞いて「え?」と思わず小さく声が出た。
「別に強がりじゃないよ」と彼女は念を押すように言った。
「今追いかけたいのは、本田君じゃなくて、勝見君だから」
その言葉は、僕の耳を突き抜けて全身を震わせた。
僕の体からすべての力を奪っていくようで、立っているのもつらかった。
わかっていたけれど、彼女の口から直接聞くのは、やっぱり、きつい。