きみに ひとめぼれ


「こんな私じゃ、ダメだよね」


彼女は「ははっ」と無理に声を出して笑う。

そんな彼女の姿に、僕の胸は張り裂けそうだった。

それに耐えられなくて、眉間に力がこもって目をぐっとつぶった。

鼻から大きく息を吸い込んで、ふーっと吐きだして、顔を上げた。



「僕は、それでもいいよ」


「え?」



彼女は驚いた表情でゆっくりと僕の方を振り向いた。

僕は、振り絞れるだけの声を出して言った。 



「それでも僕は、坂井さんのことが、好きだよ」



情けなく声が震えていた。

走ってもいないのに呼吸が乱れて、小さく息が切れていた。

時間が止まったように静かだった。

だけど心臓は大袈裟に脈打ってうるさかった。

大きく見開かれた彼女の目に、僕はどう映っているんだろう。

想像したら、笑いがこみあげてきた。


__はあ、だめだ。

  僕には全然、似合わない……



僕は真剣に彼女を見つめる表情をふっと緩めた。


「……って、言うんじゃない。あいつだったら」


 
僕は笑顔で言ったつもりだった。

笑顔でいられただろうか。

こんな切ない気持ちを抱えたままで。


「そう、かな」


彼女は肩を落として、まだ不安そうな表情をしていた。


「あいつの気持ちには、もう気づいてるんでしょ?」


「うーん……」って彼女は微妙そうな顔をする。

でも、何となく口元が緩んでいるのがわかる。

素直で、わかりやすい。


「自信ないんだあ。また、一目惚れだから」

「え?」


「一目惚れから始まる恋なんて、上手くいきっこないんだもん。

 今までもそうだったし、本田君のことも、そうだったから。

 わかってるのに、懲りずに一目惚れから始まる恋ばっかりしてるんだよね、私。

 面食いだから。

 でも、ひとつもうまくいったことなんてなくて。

 勝見君のことも…………そんなだから、怖いん、だよね」
 

僕の口から、ふーっとため息のようなものが漏れた。

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