きみに ひとめぼれ


「ああ、そういう意味なんだ」


彼女の思いのほか明るい声が放たれて、「え?」と僕は思わず顔を上げてしまった。


「ありがとう、園田君」


ほんの一瞬だけ見えた彼女の表情は、先ほどよりもずっとすっきりしているように見えた。

そして、彼女はまた背を向けて、窓から見える残りわずかとなった夕焼け空を仰いだ。


「わかってるんだあ、私だって」


ぐすんと、彼女が洟をすするのが分かった。


「ああ、ダメだあ……、私、やっぱり、勝見君好きだなあ」


声が震えていたけど、僕にはわかる。

坂井さんは、笑って言ったんだ。

流す涙は、嬉し涙だってことを。


彼女は窓の外を見つめたまま、こちらを振り返ることはなかった。

僕には、その窓から見える消え入りそうな夕焼けさえまぶしすぎて、見ていられないほどだったのに。


< 140 / 166 >

この作品をシェア

pagetop