きみに ひとめぼれ

残りの日程をこなして、いよいよ京都とも別れの時が来た。

帰りのバスで女子と座る人をじゃんけんで決めた。


僕は、負けた。

つまり、僕が女子と座るということだ。


じゃんけんで負けた瞬間は、「えー、マジで?」と不満を漏らしてみたけど、本当はまんざらでもなかった。

だけど女子とふれあえる期待が半分で、残りの半分は、女子と二人で何を話したらいいのかわからない不安だった。

話さなくても、どういう態勢で座っていたらいいのかとか、視線をどこに置いたらいいのかとか、そんな細かいシミュレーションしていた。


__隣が坂井さんだったら……


そんな期待を胸に、あいつの背中を追ってバスに乗り込んだ。

入り口の狭い階段を上ったところで、あいつは急に足を止めた。

急に止まったのであいつのリュックに顔をぶつけた。

顔をゆがめている間に、あいつは再びゆっくりと進み始めた。

グループで決められた座席のところへ。

ずんずん進んでいくと、あいつは自分が座るはずの席を通り越していった。


そして、


「ここ、座っていい?」


そう聞いた。

聞いた相手は、坂井さんだった。


坂井さんは一人でそこに座っていた。

あいつが指さしたのは、僕が座るはずの席だった。

じゃんけんで、ちゃんと負けた僕が。


「ああ、うん、どうぞ」


と、坂井さんはあいつを席に招いた。

あいつはとても自然に、坂井さんの隣に腰を下ろした。

僕たちの方に、目を合わせることもなかった。

呆然と立ちすくむ僕にさえ。


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