溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
「ねえ、ねえ。この車に乗った女の子って、わたしだけ?」
思わず調子にのって聞いてみる。
「なんだよ、それ」
「え? それはぐらかしてる? いや、いい。言わないで! 聞きたくない」
もし他の女の子が乗っていたとなると耐えられそうにない。
「自分で聞いておいてなんなんだよ」
呆れた和也くんが、チラッとこちらを見て笑った。
「お前がはじめてだよ」
「え?」
「だからこの車に俺以外の人が乗るのは、お前がはじめてだ」
うれしくて笑顔になる。
「わたしがはじめてかぁ……そうなのかぁ」
思わずつぶやいては、ニヤニヤしてしまう。
「偶然そうなっただけだ。別に特別な意図はない」
「うんうん、わかってる。わかってるけど……うれしいんだもん」
そうこの気持ちは和也くんにはわからない。こんなささいなことでわたしが喜ぶとは思っていないのだ。
「とにかく、わたしにとってはすごくうれしいことなの」
「ああ、わかった、わかった」
和也くんは苦笑いでハンドルを握っていた。
それから自宅の近くに着くまで、話をしていたのはわたしだけ。一方的なのはいつものことだから気にならない。
「ありがとう。気をつけて帰ってね」
車を降りたわたしがそう告げると、運転席のパワーウィンドウがゆっくりと下がった。
「来週からよろしくな」
それだけ言うとさっさと、車で走り去ってしまった。
そういうぶっきらぼうなところが、たまんないんだよなぁ。
わたしはにやけっぱなしの顔をますます、デレデレさせて帰宅した。