溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
「……っ!」

 驚いて目を丸くしたわたしを見て、和也くんは満足した表情を浮かべた。

「行ってくる」

「え、あ、うん」

 なんだかふわふわしてまともな返事ができない。

 彼がいなくなってからやっと現実味を帯びてきた。

「か、和也くんってば、もう」

 うれしすぎて顔がこれ以上ないほど緩む。

 鼻歌を口ずさみながら、わたしは早速料理に取りかかった。

 張り切って作りはじめたものの、好きな人に料理を作るのは緊張する。けれどこれもわたしの長年の夢だったのだ。

 もちろん彼の好きな食べ物はリサーチ済み。今日はグラタンとサラダ。それにコンソメスープ。フランスパンを買ってきたのでガーリックトーストも作るつもりだ。

 実家暮らしとはいえ、この日のためにちゃんと料理をしてきてよかった。

 材料の鶏肉、エビ、タマネギをカットして、バターを溶かしたフライパンで炒める。ある程度火が通ったところで、一度火を止めて小麦粉を入れ具材に絡める。そこに牛乳、コンソメ、マカロニを加えとろみがつくまで煮込む。

 ここまでくれば、後はグラタン皿に移してチーズをかけてオーブンで焼くだけ。山科家特製のグラタンだ。

 一段目にグラタンを入れて、二段目にはカットしたフランスパンにガーリックバターを塗って並べた。

 オーブンで焼いている間に、サラダをお皿に移す。きっと野菜を冷蔵庫に残しても、傷んでしまうことを予想してすでにできているサラダを買ってきた。それにスモークサーモンとミニトマトで彩りを添える。

「あ、スープ忘れてた」

 最初に材料を切ったときに、一緒に用意しておいてよかった。タマネギとベーコンをしっかり炒めて水とコンソメを加えて煮込む。これでに溶き卵を流し込めばできあがり。

 キッチンにチーズの焼ける匂いが漂ってきた。

 それと同時にシャワーを終えた和也くんが、Tシャツにデニム姿で現れた。

 わたしはその姿に思わず見とれる。

 濡れた髪はまだ乾ききっていなくて、ラフな感じが妙に色気を醸し出している。Tシャツ一枚だけだから彼の男らしい体を意識してしまい目が離せない。

「いい匂いがしてる。これは期待していい?」

 彼はそう言いながらサラダのミニトマトをつまんで食べた。
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