溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
 そこでわたしは慌てて我に返った。

「あっ、もう。だから一応食べられるものは作るって言ったでしょ」

「俺の好物知ってるあたり、さすがだな」

 彼はおなかがすいているのか、オーブンの中を覗き込んでいる。

「もうすぐできるから、もう少しだけ待って」

「わかった」

 和也くんは冷蔵庫を開けると、ミネラルウォーターのペットボトルを出してゴクゴクと飲む。
 そうこうしているうちに、グラタンができ上がった。こんがりと焼けたグラタンとガーリクトーストを取り出すと、和也くんは歓喜の声をあげた。

「うわ~うまそう」

「うん。すぐにセッティングするね」

 カトラリーやグラス、お水は和也くんが運んでくれる。わたしはあつあつのグラタンを運び、その他の料理をテーブルに並べた。

 向かい合って座るとなんだか照れくさい。考えてみると和也くんと本当にふたりっきりで食事をしたのは、はじめてかもしれない。これまではお店だったから完全にふたりではなかった。

「どうかしたのか?」

「ううん。なんでもない。早く食べよう」

 ふたりで手を合わせて「いただきます」と言って食べはじめる。

 わたしは和也くんの反応が気になって、じっと彼を見ていた。

 グラタンを大きくスプーンですくうと、息を吹きかけて熱を冷ました。それでも熱そうに眉間にしわを寄せて口に運んだ。

「どうかな?」

 味わっている和也くんに、尋ねた。口に合えばいいのだけど。

「うまいっ! いや、想像以上だ」

 感心した様子で、スプーンですくったグラタンを見てから口に運んだ。それから夢中になって食べている様子を見て、うれしくなる。

「よかった」

 ほっとしたわたしは、自分の分を食べはじめた。和也くんと食べているせいか、いつもよりもずいぶん美味しく感じる。この日のためにお料理を頑張ってきたと言っても過言ではない。
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