溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
 翌朝、自宅の洗面台で歯を磨く。

 正直はじめての夜の翌日。和也くんはずいぶん優しくしてくれていたとは思うけれど、それでもやっぱり体に違和感が残っている。

 けれどそれに勝る幸福感でわたしは、幸せいっぱいだった。

「おはよう。お姉ちゃん」

「ああ、瑠衣。おはよう。昨日はありがとうね」

 色々と事情を知っているであろう瑠衣と顔を合わせるのが、妙に照れくさい。

「ほんとだよ。昨日、わたしが気がつかなかったら大変だったんだからね」

 昨日、舞い上がったわたしはすっかり家に連絡を入れるのを忘れてしまっていた。そこに気がついた瑠衣が母に遅くなると言っておいてくれたのだ。

「本当にありがとう。今度プリン買ってくるから」

 瑠衣の大好物のケーキ屋さんのプリンで買収する。

「二個ね」

「わかった、わかった。二個でも三個でもいくらでも買ってくる。本当にありがとうね」

 わたしが両手を合わせて感謝すると、瑠衣はにっこりと笑った。

「よかったね。お姉ちゃん、すごく幸せそう」

「え。そうかな……」

 あらためて言われるとやっぱり照れてしまう。

「粘り勝ちみたいなところあるけど……まあ向こうもまんざらでもなさそうだね」

 そう言ってわたしの胸元を指差した。

 そこには赤いキスマークがひとつついていた。

「え、嘘」

「見えるか見えないかギリギリのところにつけてるあたりに、中村さんの独占欲が垣間見られるわ。ねえ、早く代わってくれない?」

「あ、うん」

 これがキスマークか……。

 はじめて見るそれはなんだか妙にくすぐったい。

 洗面所を出ていこうとしたわたしを瑠衣が振り返る。

「お姉ちゃん、本当によかったね」

「うん、ありがとう」

 わたしの恋を半ば呆れながらもずーっと応援してくれていた瑠衣には感謝しかない。

 今日の帰りは、プリンだけじゃなくてケーキも買ってこよう。

 それで瑠衣に本当に好きな人ができたら、全力で応援しよう。

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