溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
 それから大学生になった彼女と、小児科への慰問ボランティアで再会することになる。担当教授から人手が足りないからと頼まれ、何人かの学生と一緒に参加したボランティア。そこに看護学部のボランティアサークルの一員であった彼女がいたのだ。

「山科瑠璃です。よろしくお願いします」

 グラウンドで走っていたあのときと同じ顔で笑っていた。つらい出来事を乗り越えられ元気にしていたのだとわかって、なぜだかほっとした。

 自分が他人にこんな気持ちを持つなんて不思議だったのを覚えている。

 物心ついた頃から自分が人より優れていることを自覚していた。老若男女からちやほやされて、子供ながらにかわいくなかったと思う。けれど幼い頃からそんな生活を送ってきたせいで、人を見る目は養われた。

 年頃になってからも、外見や肩書きだけで寄ってくる奴らとは、それなりのつき合いしかしてこなかった。

 なかなか人に心を許さないせいで、女性とつき合っても当然うまくいくはずもなく……そんな俺に瑠璃だけはずっと変わらない態度と思いで接してくれた。

 そして何度かボランティアで一緒になり、頻繁に話す回数も増えたあるとき、彼女からはじめて告白された。

 きっと生まれてはじめての告白だったに違いない。顔を真っ赤にして俺のことを好きだと言う。

「理由は?」と聞いた俺に「理由? 好きに理由が必要なんですか?」と驚いた顔を見せたのを今でも覚えている。

 今から考えてみれば、瑠璃の言うことが正しかった。そう思える。

 それから俺が何度振っても諦めることなく、誕生日やバレンタイン、クリスマスなど、なにかイベントのあるたびに、いや、イベントがなくても彼女は隙きあらば俺に気持ちを伝えてきた。

 断っても断っても繰り返さえる告白。まわりも呆れていたが、本人はいつも全力だった。

 俺はまた来たか……と思いつつも、どこか彼女の告白を心待ちにする自分がいた。

 裏表がなく天真爛漫な瑠璃のそばにいるとそれだけで気持ちが晴れやかになる。

 ただ……そんな彼女だからこそ、俺は受け容れるべきではないと思っていた。人に対してそれなりのつき合いしかしてこなかった俺では、彼女を大切にはできないだろう。そう思えばこそ、頑なに拒否し続けてきたというのに……。
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