溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
「これだもんなぁ……」

 隣で子供のように寝息を立てて眠る瑠璃の頬にふれる。するとくすぐったそうに身じろぎをした。そしてしばらくするとまた寝息を立てはじめる。

 はじめての彼女を相手に、無理をさせてしまった。それくらい長年ほしいと思っていたから。

ダメだと自分に言い聞かせていた存在を手にして、我慢がきかなかった。

「瑠璃、本当に俺でいいのか?」

 彼女に聞けば「もちろん!」という返事があることはわかっている。それでも聞かずにはいられなかった。



 実家に戻って病院を立て直すと決めた。

 義兄の製薬会社との癒着、病院の金の使い込み、愛人との駆け落ち。それらが病院だけでなく家族に与えた衝撃はかなり大きい。

 特に姉は〝自分の責任だ〟と自責の念にかられている。

 よくない噂ほどすぐに広まる。それを上回る成果を出さなくてはいけない。できることはなんでもやっていく。

 製薬会社は信頼のおける友人の会社、川久保製薬に徐々に切り替えていく。不本意でも俺がテレビに出ることで、病院にやってきてくれる患者さんも増えた。

 それと同時に医師としての経験も積まなくてはならない。患者に向き合えなくなっては医師失格だ。

 こんな状態で彼女を自分のものにするだなんて間違っている。きっとさみしい思いをさせるに違いない。

 でも……我慢できなかった。

 本来ならば、きちんとした形で病院を立て直してから彼女に気持ちを伝えるつもりだった。

 けれど彼女が俺以外の誰かの手を取り、本当に俺から離れていくと思うと、その手を掴んで離せなかった。

 これまではいつも彼女は俺のそばにいた。彼女が離れていくなんてこと、少しも考えていなかった。

 本当に我ながら傲慢だと思う。

 散々振り回しておいてこんな都合のいい話、許されるはずがない。

 けれど彼女は……瑠璃は迷いなく俺の手を取ってくれた。

 そんな彼女のまっすぐな思いを受け止めて、それ以上の愛情を返していくつもりだ。

 思い返してみれば、俺のほうがずっと瑠璃に気持ちを持っていかれていたのかもしれない。

「瑠璃、これまでずっとありがとう。それから、これからもよろしく」

 俺は眠る彼女の頬に口づけすると、引き寄せて抱きしめた。
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