溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
* * *

「え? なんて言ったの?」

 わたしは座っていたソファから跳び上がるようにして立ち上がった。右手にはスマートフォン。通話の相手はもちろん和也くんだ。

 本当なら今日はデートのはずだった。しかし和也くんが緊急で呼び出されてしまい結局会えずじまい。わたしは肩を落として帰った後、お風呂に入って部屋でやけ酒よろしく缶チューハイを飲んでいたところだ。

『だから一緒に暮らさないかって言ってる』

「ええぇえええええぇ」

 思わず大声をあげたわたしに、隣の部屋にいる瑠衣から「うるさいよ!」という抗議の声が届く。しかしそんなこと気にしていられないくらいわたしは驚いていた。

『そんなに驚くようなことか?』

「いやだって、突然だから」

『俺はずっと考えてた。今日みたいに急に会えなくなるたびに瑠璃が落ち込む必要がなくなる』

「和也くん、気がついてたんだね」

『当たり前だろ』

 そんなことを考えてくれていたなんて……。たしかに会えないと言われた日は、和也くんには見せないようにしてたけれど本当はひどく残念だったのだ。

「わたしのために、ありがとう」

 彼が仕事で会えないのは、仕方のないことだ。部屋で待つにも終電までの限られた時間だ。たしかに一緒に暮らせば少しでも長く同じ時間を過ごすことができる。

『異論はないんだな。明後日の夜だけど、ご両親は家にいる?』

「え? うん。十九時にはふたりとも家にいると思うけど」

 どうして急にそんなことを?

『じゃあその時間にそちらに挨拶に行くから、おふたりにそう伝えておいてくれないか?』

「え? 挨拶って、お父さんとお母さんに?」

『当たり前だろう。一緒に暮らすんだからけじめをつけないと』

「そっか……そうだよね」

 まずはそれまでに、自分で両親に和也くんと暮らしたいと話をしなくてはならない。きっと反対はされないと思うけれど、やっぱりきちんとしておいたほうがいい。
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