溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
「では、遅い時間にお邪魔しました」

 玄関でもう一度頭を下げる和也くんを、父をはじめ山科家の面々で見送る。

「またいらっしゃってね」

 母の言葉に父もうなずいた。どうやらふたりのことを前向きに認めてもらえたようだ。

「わたし駐車場まで送ってくるね」

 サンダルを引っかけて和也くんについて外に出て、ゆっくりと駅の方向へ歩き出す。

「今日はありがとう。お父さんに話をしてくれて」

「ああ。当たり前だろう。別に礼を言われるようなことをしたわけじゃない」

 そうは言うけれど、和也くんだって疲れたに違いない。その証拠にネクタイを緩めながら深く息を吐いた。

 わたしのために、きちんと話をしてくれた彼がますます好きになった。うれしくて人目を気にせずに彼の腕に自分の腕を絡ませた。

 和也くんはチラッとわたしの方を見ただけで、特に嫌がるそぶりを見せなかったのでここぞとばかりに彼にくっついた。

 まだ昼間の熱が残る街をふたりでゆっくりと歩く。

「わたし、幸せだな」

 ふとそうつぶやいた。そんなわたしを見て、和也くんが笑う。

「このくらいで?」

「そう、こうやってくっついているだけで幸せだよ」

「じゃあ、これからはずっと幸せってことか?」

 からかうような和也くんに、うなずいてみせる。

「そうか、まあ……わからなくもないかな」

「え? 和也くんも?」

 彼は返事をしなかったけれど、わたしに笑顔を向けてくれた。

 わたしもそれ以上はなにも話さなかった。

 夏の心地よい夜風が吹く中、ただ腕を絡めてゆっくりと歩いた。
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