溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
 あの日から一週間。

 和也くんとわたしの間には、今まで感じたことのないギクシャクした雰囲気が流れている。どちらかというとわたしのほうが、気持ちがモヤモヤして彼に対していつも通りの態度が取れないでいるのが原因だ。

 そしてそのモヤモヤを煽るような出来事が起きた。

 いつも通りのお昼休憩。真鍋さんが手にした週刊誌を見て「えっ!」と声をあげた。そして次の瞬間にそれをバタンと閉じてしまう。

「どうかしたんですか?」

「ううん……なんでもないよ。それよりテレビ見ようかなっと……」

 隠すように雑誌を遠くに追いやり、代わりにテレビのリモコンを手に取った。ボタンを押すといつも見ているお昼の情報番組をやっていた。

 そして画面に大きく映し出されているのは、和也くんの写真だ。

「あっ……」

 気まずそうにつぶやいた真鍋さんに気がついたが、わたしはそれどころではなかった。テレビでは、和也くんと女性の交際の話題が取り上げられていたのだ。もちろん相手はわたしではない。

 週刊誌のスクープだと伝えている。わたしは先ほど真鍋さんが見ていた週刊誌を手に取りページをめくっていく。すぐに和也くんと人気モデルのレイナの記事を見つけた。

 ふたりが彼女の自宅マンションに入っていく姿が、写真に撮られている。見覚えのあるふたりの服装。わたしが目撃した日に間違いない。

 和也くん……彼女のマンションに行っていたんだ。

 帰宅は日付が変わる頃だった。頑なにあの日なにがあったのか話してくれなかった。

 そういうことなんだ……。

 ただの知人であれば、マンションまで行く理由などない。もし送っていくのだとしてもわざわざタクシーを降りて中に入る必要なんてない。

 それに……この写真のふたりはどう見ても腕を組んでいるように見える。どこからどう見ても、ふたりがつき合っているという事実を物語っていた。

 途端に体から力が抜ける。
< 133 / 156 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop