溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
「こっちです、こっち!」
すぐに別の人の声が聞こえた。そこにはレイナさんが連れてきた警備員が男を取り押さえる姿があった。
「おい、はなせ! はなせー」
大声をあげる男を警備員がふたりがかりで警備室に連れていく。
それを見届けたレイナさんが、慌てた様子でこちらに駆けてきた。
「大丈夫ですか? 救急車呼びましょうか?」
「いや、その必要はない。今のところ問題なさそうだし、俺がちゃんと診るから」
それでもレイナさんは心配そうだ。
「ごめんなさい、おふたりを巻き込んで」
「いえ、和也くんの言う通り本当に大丈夫なんで、気にしないでください」
痛みはまだあるが、我慢できないほどではない。以前も安静にしていたらすぐに痛みは引いた。
「レイナさんは大丈夫でしたか?」
「はい。おかげさまで。とりあえず今から警察の人に事情を説明します。でもその前に、彼女さんに誤解をとかなくては」
「あ……そのためにここに?」
和也くんはわたしを見てゆっくりとうなずいた。
「報道を見て驚かれたと思います。ごめんなさい。でも、本当にわたしと中村さんはなんの関係もないんです。今日犯人も捕まったので、もう彼の手をわずらわせて、あなたを困らせるようなこともありません。おふたりとも、ご迷惑をおかけしてすみませんでした」
深く頭を下げたレイナさんが、顔を上げた。
「では、失礼します」
レイナさんはそのまま警備室へと走っていった。
走り去る彼女を見て、ほっとしたのか体の力が抜けた。そんなわたしを和也くんがしっかりと受け止めてくれる。
「さっきは大丈夫なんて言ってたけど、あんな怖い思いしたのに大丈夫なわけないだろ。とりあえず話がしたいんだけど、いい?」
「うん。わたしもきちんと話を聞いておきたいから」
もうこれ以上はすれ違いたくない。きちんとした話を聞く覚悟で、部屋に帰った。