溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
「はぁ、もう一週間も和也くんに会ってない」

 年の瀬も差し迫った十二月。

 和也くんが海外出張に行ってしまい、さみしくなったわたしは実家に戻ってきていた。

「もう、またぁ? もういつものことじゃない、そろそろ諦めたら……って言っても無理か。明日はクリスマスイブだもんね」

 目の前で夕飯を食べる瑠衣が、哀れみの目で見てくる。

 そうなのだ。普段なら我慢できるけど明日は和也くんとつき合ってはじめて迎えるクリスマスイブなのだ。しかも暦は日曜日。余計に会いたくなってしまう。

「このわたしだって仕事なんだから、いいじゃない。家でチキン食べよう。ケーキはお姉ちゃんに任せた」

 この年末の時期、デパートに勤める瑠衣は忙しい。彼女の勤める化粧品会社のクリスマスコフレは毎年予約開始とともに完売するほど人気だ。それ以外の商品もプレゼント用に名入れをしたり、息つく暇もないほどの忙しさだと毎年ぼやいている。

「仕方ないよね、和也くんとつき合ってるってだけで、わたしには贅沢なことなんだから」

 ただでさえ医師は忙しい。それに加え中村総合病院の跡取りとしての仕事も増えたという。

色々な会合に顔を出したり雑誌にコラムの連載を持ったりと、いくらなんでもできる彼でもこの目の回るような忙しさにお疲れ気味だ。

 それに加えて、今週の海外出張。

 だから無理は言えない。部屋に用意してあるプレゼント、渡せるのはいつになるのか考えるとため息が出そうになるのを慌てて引っ込めた。

 悩んでいても仕方ない。

「ねえ瑠衣、ケーキは生クリームでいい?」

「うん。楽しみにしてるね」

 家族で過ごすクリスマスだって悪くない。わたしは気持ちを切り替えて明日作るケーキのレシピを頭に思い浮かべていた。
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