溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
「せっかく予約したんだから、ふたりで行ってきて。次はいつ行けるかわからないんだから。急にキャンセルしたらお店にだって迷惑がかかっちゃう」

 たしかに真鍋さんの言うことも一理ある。どうするべきかと君島先生を見る。

「まあ、そう言ってくれてることだし、行こう。真鍋さんも自分のせいでキャンセルになったって負担に思わずに済むだろうし」

「そうよ、行って感想聞かせて」

 ふたりにそう言われて、わたしは結局君島先生とふたりで歓迎会を行うことにした。

 到着したレストランは隠れ家という表現がぴったりの、イタリアンレストランだ。

 ペンダントライトが印象的なカウンターの席に、ソファ席、大人数が座れる大きなテーブル席が奥にあった。

 昼間はオープンテラスになるようで、爽やかな風に吹かれながらランチを食べたら気持ちいいだろう。

 三人で予約していたが、ひとりキャンセルになったことをお店のスタッフに告げた。するとそのままソファのある席を使って構わないということだったので、すでにワイングラスや、カトラリーがセッティングされている席に着いた。

 予約時に料理は注文していなかったようで、君島先生とメニューを見て決める。

「どれも美味しそう~」

 うきうきとメニューを見る。あれもこれも美味しそうでついつい目移りしてしまう。

「ゆっくり見て決めて。俺は好き嫌いないから」

「そうなんですね!」

「この間の合コンのときもそういう話したんだけど、覚えてない?」

 必死に当時のことを思い出す。

「そういえばそんな気が……」

 はっきりしないわたしを見て、君島先生は苦笑をもらした。

「ほんとに中村先生以外の男の人には興味ないんだね。合コンのとき、自己紹介したのに俺の名前もまったく覚えてなかったし」

「す、すみません。実はああいう場って慣れてなくて」

 ずっと和也くんに思いを寄せてきたので、そもそも飲み会も職場のくらいしか出たことがない。合コンなんてこの間のがはじめてだ。
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