溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
「そうか……」

「まあ、今までだって決して近くにいたわけじゃないんですけどね」

 和也くんの近くにいられたのは、ここ最近を除くと、大学生のときにしたボランティア活動で一緒だったときくらい。それもほとんどと言っていいほど彼と話をすることはできなかった。必死になってまとわりつくのを周りがいつも笑っていたのも覚えている。

 その後留学したときも、気まぐれに返事があるだけで向こうからメッセージがきたことなんて本当に数えるほどだ。

 わたしが追いかけて、彼がそれをかわすという日々をもう何年も繰り返してきている。

 それがここ最近彼と一緒に働いたことで、ますます恋心が募ってしまったようだ。そして彼の態度も今までとは違ったように思えて、そこに希望を見いだしてしまった。

 だからその反動で、こんなにさみしい気持ちになったに違いない。

「あ~あ、わたしがこんな気持ちでいるなんて、和也くんは全然わかってないんだろうな」

 悔しくて思わず本音を漏らしてしまう。

「うーん。たしかにそうかもしれないね」

 君島先生に同意されて、ますますへこみそうになる。

「ああ、もう。そんなにがっかりされたら妬けちゃうな。だけど瑠璃ちゃんが中村先生にその気持ちを伝えていないなら、向こうがわからないのも仕方ないかなって」

「でも、わたしは好きって伝えてるのに」

「そうだね、たしかにいつも全身で表現してる」

 君島先生はクスクスとおかしそうに笑った。

「でも今の気持ちは伝わってないんじゃないかな。それに中村先生の気持ちだってわからないんじゃないの?」

「和也くんの気持ち……いつもはぐらかされちゃうから」

 わたしがあまりに告白しすぎたのか、いつも適当に流されてしまう。だからここ最近は告白を控えて、ここぞという場面でもう一度しっかり気持ちを伝えるつもりだったのだ。そう……ラストチャンスとして。

「中村先生だって、もしかしたら君と同じ気持ちかもしれないよ。だってこんなにかわいい瑠璃ちゃんが日常からいなくなっちゃうんだから」
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