溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
「同じ気持ち? そんなことありえないですよ」

 さみしいとは言ってくれた。でもそれはわたしの気持ちと比べたらたいしたことはないはずだ。

 いつだってわたしの和也くんへの気持ちが大きくて、その百万分の一でも思ってくれていれば幸せだと思う。

「ありえないかなぁ。俺は案外ありえることだと思うんだけどなぁ」

 君島先生はそう言うけれど、そんなそぶり一度だってなかった。

「一度ちゃんと気持ちを聞いてみるといいよ。もし瑠璃ちゃんが悲しむことになったなら、ちゃんと俺が受け止めてあげるから」

 君島先生は自分の胸をトントンと叩きながら「任せなさい」と胸を張った。

 その姿がおかしくて、クスクスと笑う。

「よかった、笑った」

 君島先生の気遣いにほっとする。

「あーあ。和也くんも君島先生の半分いや、十分の一でも優しくしてくれたらなぁ」

「それでも、やっぱり中村先生がいいんでしょ?」

「うん」

 即答したわたしに、君島先生はうなだれた。

「ねえ、そこは少しでも悩むそぶり見せてくれてもいいんじゃない? 一応俺だって、君に告白してるんだから」

「あ、ごめんなさい」

 たしかにそんなこともあった。優しくないのはわたしだってそうだ。

「いや、そんな真剣にあやまらないで。答えがわかってて聞いたのは俺だし」

「でも……」

 せっかく励ましてくれていたのに、失礼だった。

「いいから、いいから。そんな顔しないで。そろそろ時間も遅いし帰ろうか」

 立ち上がった君島先生の後についていく。その背中を見てこの人を好きになれたら、きっと幸せなんだろうな……と思いながら家路についた。
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