【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜
「どうした?黙り込んで」
「な、な、何でもないよッ」
「何かお前様子おかしくないか?」
「べ、別におかしくないでしょ。肩ね~、肩はあんまり出しちゃうと風邪を引いちゃうしね」
適当な事を言って誤魔化してはみたものの、私は余りに演技が下手すぎる。
真央は訝し気な目で私を見つめ続け、それを逸らすように立ち上がりお皿の片づけを始める。
やましい気持ちはないのにこんなに焦ってしまうのは、あの日を楽しんでしまった自分がどこかに居るからだ。そしてりっちゃんの為とはいえ、再び雄太と会う約束をしてしまった事。
あぁ…ハッキリ言ってしまいたい。そして引き止めてもらえば、私は思いとどまるだろう。けれど機嫌が悪くなる事は間違いなし。せっかく映画の話も決まり、寮の件も何とかなりそうなのに、そこにわざわざ水を差したくない。
一緒に居れる時間が少ないのならば、その時間位笑って過ごしたいのは真央も私も同じ事。
だからこの話はすべきではない。そもそもそこからして間違いだったのかもしれないけれど。機嫌が悪くなっても喧嘩をしたとしてもきちんと話し合うべきだったのだ。後から後悔をしても遅いのだけど。
折角の土曜日。
ふたりきりで過ごせる甘い時間。
けれど本当に甘えていたのは、私の方だったのではないか。
真央はいつだって真っ直ぐな想いを私へぶつけてくれた。そんな彼に嘘や隠し事はない。でも私は隠し事をしている。隠し事をしている時点でやましいのだ。それにもっと早く気づけば良かったのだ。
「ふぅ…こうしている時間が1番落ち着くな…」