【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜
「あ、あの、大丈夫ですッ。私の方でなんとかしますから。
ふたりとも忙しいのに今日はわざわざ来てくれてありがとうございますッ…。ケーキまで持ってきてくれて
私だってこのままなのは嫌だし、納得もしていないから…自分で真央に話に行こうと思います」
周りに助けてもらうだけじゃなくって、自分で何とかしなくちゃ。
だってこれは私と真央の問題で、昴さんたちを巻き込むのは間違ってる。
忙しいのに心配をして寮までわざわざやって来てくれた昴さんと岬さん。ふたりにもう心配を掛けたくない。
ふたりは最後まで気を遣ってくれた。何かあったら直ぐに連絡しておいでと昴さんは優しく言ってくれて、岬さんはぶっきらぼうな態度だったけれど、それが彼女なりの心配の仕方だというのは十分に伝わって来た。
寮の皆も心配している、自分でも動かなくちゃいけない。たとえ拒絶されたとしても、もう真央が私達の関係を終わらせようとしていようと。
このまま終わらせたくない。こんなに好きになれる人と出会えるなんて人生で一度切りだと私は信じている。
―――――
翌日、大学帰りに私は寮に戻るのではなく真央のマンションに向かっていた。
坂上さんからドラマの撮影は終えたと情報は聞いた。どこにも行っていなかったら、真央はマンションに居るはずだ。
そして手のひらに握りしめられた合鍵。冷たい金属の感触と汗がじんわりと手のひらに滲む。自分から会いに行こうと思えば、この鍵を使ってマンションで待つことも出来た。
けれどそれをしなかったのは、どこまでも意気地がなかったからだ。待っていれば真央の方から歩み寄ってくれる。この期に及んでそんな期待ばかりして、昴さんたちが訪ねて来てくれるまで自分から行動を起こそうともしなかった。