あの丘で、シリウスに願いを
「先生方、どなたかお願いします!」
「どーした?小西先生いるでしょ?あー、手に負えない感じ?」
呼びに来た看護師が、困ったように首を縦に振る。

「私、行きます」
勢いよく立ち上がったのは、まことだ。

「あ、まこと、食べてなよ。俺行くから」
「大丈夫です、行ってきます」

食べかけのパンもそのままに、まことが飛び出して行った。


その背中を見送って。
周囲に誰もおらず、翔太と二人きりであることを確認してから、水上が切り出した。


「どうするんだよ、翔太、六平先生相当ヤバイ状態じゃないか?」
「俺たちが抜けたらもっと厳しくなる。まことには荷が重すぎるかもな。
北山のところなら経験を積むにはいいよなぁ。ここよりは余裕もあるだろうし」
「医師としての意見なんて聞いてない。そんなことわかってる。俺が聞きたいのは、お前の気持ち」
「俺の?まことが行きたいなら送り出すけど」

実は翔太も水上も、光英大学付属病院に異動が決まっていた。二人が抜けるまでにまことを横浜新医療センターの救急外来のエースにするはずだったのだが。

聞くまでもないと言わんばかりの翔太に、水上は特大のため息をついた。

< 119 / 153 >

この作品をシェア

pagetop