あの丘で、シリウスに願いを


「向こうはね、小西先生もだいぶ慣れてきたし、元気いっぱいの研修医もいるし、他の科からの応援体制も整ってね、以前より時間が取れるようになったんだ。
それでも翔太は相変わらずほとんど部長室に住んでる。ナナちゃんも実家に預けてしまって、仕事中毒に拍車がかかってしまったよ。
翔太はどんどん自分を追い詰めてる。もう俺にも止められない。
六平先生、翔太を助けてやってくれないか?このままじゃアイツは壊れてしまう」

「…私が翔太先生に出来ることなんて何もありません」

「…おんなじ」
「え?」
「久しぶりに六平先生に会って感じたんだよ。
翔太と同じ目をしてる。過ぎた日に気持ちを置いたまま。ここに居ない人を探している目」
「…」

まことは、うつむくしか出来なかった。その時、水上が声をあげた。

「そっち終わったのか?早かったな」

< 137 / 153 >

この作品をシェア

pagetop