あの丘で、シリウスに願いを
翔太は水上から上着を受け取ってそれを羽織り、まことの手から受け取ったシリウスを内ポケットに刺した。

「洸平、うちに寄れよ。汗かいただろ?シャワー浴びて行け。俺も着替える」
「え、いいのか?それは助かる」

「では、私はこれで失礼します」
まことは踵を返した。自分の意気地のなさを痛感する。切なくて、これ以上翔太の近くにいたくなかった。

「あ、ちょっと待って。一つお願いがあるんだけど」
帰りかけたまことを翔太が呼び止めた。

「俺たち、食事するつもりだったんだけど、予約の時間過ぎちゃってさー。事情を話したら持ち帰り用に料理を詰めてくれたんだ。ただ、さすがに部屋までは届けられないって言われてね。取りに行ってもらえないかな?」
相変わらずの軽い口調で翔太がお願いを口にする。

「…私が?」
「水上はオペで疲れてるだろ?早くシャワー浴びさせてやりたいし、俺は部屋を開けてやらなくちゃ。レストランはもうすぐ閉店で時間なくて。
悪いんだけど、頼まれてくれない?」

もっともすぎる理由に、まことはうなづくしかなかった。ベリーヒルズ内のレストランの名前を聞いて、とりあえず一足先に病院を出た。



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