あの丘で、シリウスに願いを
二人分のお弁当を受け取って、まことはレジデンスに向かった。エントランスには24時間コンシェルジュが居る。お弁当を届けてもらおうと声をかけた。
本当はもう一度会いたい。だけど、会えば離れたくなくなる。翔太に迷惑をかけたくなかった。

「あぁ、一条様に伺っております。お荷物お持ちしますね」
「あ、いえ、そうじゃなくてこれを届けてもらいたいんです」
「でも、お支払いを立て替えて頂いたので、お部屋にお通しするようにと」
「立て替え?それ、勘違いですね。支払い済みでしたし」
「確認します」

コンシェルジュが電話で確認してくれた。

「一条様から、支払いの確認をしたいのでとりあえずお部屋にとのことです。お弁当冷めてしまいますから参りましょう」

急患でバタバタしてしまい、支払いをよく確認しなかったのかもしれない。仕方なくまことはコンシェルジュと共に翔太の部屋を訪れた。

クリスマスイブ以来だ。嫌でもあの日のことを思い出してしまう。


「あぁ、ありがとう。助かったよ。部屋は開いてるから持って来てくれる?手が離せなくて」


インターフォン越しに翔太の声がした。
コンシェルジュが弁当を手に中に入ろうとした時、彼のポケットから呼び出しの音が鳴る。

「ちょっとすみません」

コンシェルジュというのも忙しいのだろう。まことは彼から弁当を受け取って礼を言った。

「こちらは大丈夫ですから。ありがとうございました。助かりました」
「そうですか?では失礼します」

彼は電話に出ながら慌ただしく戻っていった。

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