お見合いから始まる極上御曹司の華麗なる結婚宣言
「砂羽ちゃんすっかり薫さんに懐いていましたね」

「人懐っこくて可愛い子だったな」

薫さんがニコリと微笑む。地下駐車場へと向かうべくエレベーターへと乗り込んだ。

「……なんか薫さんがあんなに小さい子をあやすのがうまいのが意外でした」

「意外か。歳の離れた妹がいるからな。接し方には慣れている。それに普段、仕事では駆け引きをして腹の内を見せないようにしていることが多いからな。砂羽ちゃんのように純粋無垢に慕ってくれる存在は貴重だ。とても楽しかったし心が洗われたような気がする」

それはきっと薫さんの本音だと思った。薫さんのような立場になると、きっといろいろと背負うものが多く、計り知れないくらいのプレッシャーや心労があるのだろう。

普段、そんな面をまったく見せない薫さんは本当に強い人なんじゃなかろうか。薫さんには心が安らぐ瞬間や場所があるんだろうか。ふとそんな風に思っていると、

「車をここまで回すからここで待っていろ」

エレベーターを降りてすぐ、薫さんがそう言って小走りに車に向かった。
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