お見合いから始まる極上御曹司の華麗なる結婚宣言
ぼんやりと薫さんの背中を見つめていた。その心は穏やかで温かい。自然と笑みが溢れて、砂羽ちゃんからもらったピンク色の四つ葉のクローバーに視線を移したそのとき。

「美月ちゃん?」

私の名を呼ぶその声に自然と意識がそちらへと流れた。

名波(ななみ)先生? お久しぶりです」

視線の先にいたのは父の病院で外科医として働く名波先生だった。

百八十五センチはあるであろう長身に甘いマスク、そしてまだ三十代半ばだというのに、難しい外科手術をバリバリこなす有望なエリート外科医である名波先生は、病院のナースの中でとても人気があると母が言っていた。

そしてとにかく纏う雰囲気が柔らかくて性格が優しい。私が学生だった頃、研修生の先生たちみんなで、うちの実家にも遊びに来たことがあった。そういえば高校時代、苦手な数学を教えてもらったこともある。私にとって名波先生は頼りになるお兄ちゃんみたいな存在だ。

「院長に会いに来たのか?」

「はい。あとキッズルームに顔を出してました」

「そうか。それにしても久しぶりだね。最後に会ったのは……半年くらい前の病院の創立記念パーティーのときかな」

「そんなに会っていませんでしたっけ?」

自分のまわりがいろいろと落ち着かないこともあって、なかなか病院に顔を出せていなかったから名波先生と会うこともなかったんだ。
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